税理士法人はその名前にある通り法人格の1つで、一定の要件を満たすことで肩書を名乗ったり恩恵が受けられる仕組みです。
一般的に税理士といえば税理士事務所のイメージですが、こちらは法人ではなく個人で活動する経営スタイルですから、法律上の扱いは個人事業主ということになります。
つまり、これら2つの差は法人か個人の違いが大きく、その差が理解を深める上でのポイントになるでしょう。
(1)税理士法人の業務内容
実はどちらも基本的な業務内容は共通で、税務の代理や税務関連の書類作成、そして税務相談の3つが柱となっています。
3つの業務は税理士に認められていますから、資格を持たなければ従事することはできないです。
個人事業主の税理士事務所は、事務所の設立に人数の決まりはないので、1名でも事業を始めることができます。
しかし、税理士法人は2名以上の税理士が社員という条件がありますから、設立しようにも共同経営者が必要になります。
ちなみに社員税理士は株式会社における取締役に位置するので、法人設立だけでなく経営においても重要な責任があるわけです。
また、業務の多角化や継続性に損害賠償能力の強化といった趣旨により創設されていますから、法人の設立には相応の覚悟が問われます。
逆に業務の信頼性が高められる余地が生まれるので、業務提供や経営に自信がある税理士であれば、挑戦してみる価値があるといえるでしょう。
(2)税理士法人設立の要件
税理士法人設立の要件は、社員を構成するのが税理士だけで、社員の数が2名以上、それに税理士法上の欠格事由に該当する人がいないことです。
法人とはいえ株式会社とは異なりますから、民間の企業のように自由に事業展開ができるわけではないです。
従事できるのは、税理士業務や付随するものと、更に税理士法に準ずる財務省令が定める業務が該当します。
あるいは税理士が従事できる業務の受託に限られるので、税理士法の枠を超えることはできないといえます。
このように、あくまでも税理士事務所を法人化した形のものですから、株式会社に似ているようでかなり違います。
ただ、社員が強力し合って経営を行うので、チームワークを活かすことができますし、個人事業主では不可能な組織としての可能性が手に入ります。
2名以上で経営を行うことから、税理士事務所ではできなかった支店の設置が可能です。
これは税理士法人の代表的なメリットで、例えば特定の地域を複数の支店でカバーしたり、都道府県を跨いで広範囲で業務を提供することもできるようになります。
勿論、全国展開という道がひらけますから、事業を拡大して法人の規模を大きくできます。
(3)経費として計上できる支出の範囲が広い
税理士法人のメリットにはもう1つ、経費として計上できる支出の範囲が広く、節税しやすくなる点が挙げられます。
給料は役員報酬扱いになりますし、家族が社員なら社宅、もしくは保険の費用も経費計上が行なえます。
税理士事務所は個人事業主なので、稼ぎ過ぎると税率が跳ね上がってしまい、折角収入が増えても税金に消えてしまいます。
年間売上が2千万円クラスになると、所得税や住民税で税率が50%を超えますから、これくらい稼ぐ人は法人化した方がお得です。
税理士法人だと法人税と住民税や事業税を合わせても、税率は40%を切る計算です。
税率が低く抑えられれば、まだまだ稼いでも大丈夫ですから、モチベーションが損なわれずに済みます。
加えて決算月の設定が可能なことや、退職金を出せる余地、社会保険の加入というようなメリットもあります。
決算月は、何らかの理由で一時的に大きな利益が発生した場合、決算とすることで多額の納税を上手く抑えることができます。
退職金は節税に繋がりますし、社会保険は求人の訴求力になるので、いずれも魅力的です。
(4)まとめ
社会保険の加入は、経営的には負担が増加する側面はあるものの、従業員が前向きに入社を検討する切っ掛けになるでしょう。
欠損金は以前だと9年、現在は10年間の繰り越しが可能なので、これから法人化を検討する人にとって朗報です。
事業拡大やブランディングに取り組めば、営業エリアの拡大が図れますし、ブランドイメージを強みに活かせます。
国家資格の税理士は時に先生と呼ばれるほどなので、その肩書だけでも魅力的ではありますが、法人の社員となればプラスアルファの説得力が生まれます。
登記の手続きが必要になったり、事務手続きも不可欠ですから、設立までの道のりが長く感じられます。
株式会社では社員の登録や変更の手続きを要するので、入社や退社が発生する度に手間が掛かります。
社会保険だけでも、毎年する保険料算定の手続きが避けられませんから、これも事務的な負担を増やす要因となるでしょう。
必ずしもメリットばかりとはいえませんが、メリットとデメリットを天秤に掛けてどちらが上回るかは明白です。
税理士事務所には制約が多く、事業が拡大して成長していくと、いつか壁にぶち当たることになります。
収入の増加を希望せず、事業拡大の欲がないなら話は別ですが、稼ぎを大きくしたいなら法人化の検討が必要です。